明日香の空


明日香の空は、「空」の常識を破っていていつも不思議だ。いや、明日香の空はそれが常識、なんだろうけれど。きっと、気圧の関係とか位置的な問題とか色々とあるのだろうけれど、そういうことは別に知らなくてもいいと思う。山の天気は変わりやすいなんていうけれど、そういうのとも違うだろう。とにかく、空が凄い。

最初に「へん」と思ったのは中学生のときに国語便覧に掲載されていた写真だった。雷丘の写真なのだけれど、菜の花の中に雷丘。でも空は、どう見ても夏そのもの!
それが最初に私が奈良に惹かれた写真だった。「どうしてこんな写真なんだろう?」とずっと不思議に思っていた。夏なのに菜の花が咲いているのか?それとも春なのに夏のような空なのか?

とにかく行ってみるまで色々想像した。だから、はじめて行ったときの感動はわたしの文章力では表現できない。ころころ表情が変わる変わる。雲がびゅんびゅん上空を流れていく。
丸一日居て、あまりの空の色の変わりように、ああここは、私が知っている空とは全然違う場所なんだなと思った。

一昨年の夏、他にも回りたい場所があるからと、明日香村に行くことを計画せずに旅行をした時、電車に乗って明日香の方向を見た。その日はあいにく天気が悪く、悲しい思いをしていたのだけれど、どんよりとした空の中、なぜか明日香村にだけ奇跡みたいに光が、雲の間から放射線状に差しているのだ。「今すぐ明日香に行きたい!!」と思った。予定があったし、その時はあきらめてしまったけれど、何度も行っている奈良旅行の中でも一番行けばよかったと後悔している。
とにかくあのときの「明日香の空だけ特別だ。素晴らしい」という感動は、私が奈良に惹かれる理由のひとつになった。